清水医院

スタジオ アルゴ  山下 弘行


 この建物は老朽化した医院の建替えとして計画されたものです。土蔵塀に囲まれた敷地に蔵、離れ、倉庫、既存診療所を残して真中にあった使用されていない母屋を取り壊したあとに診療所を新築、竣工後に古い診療所を解体撤去するという工程となりました。

施主との打ち合わせの中で高齢者にやさしい建物で以前の医院がもっていたような田舎の集会所のような感じの建物にしたいとの要望が出てきました。また現在一般的な診療所は管理者側の発想でシステマティックに患者を動かす流れ作業の状態になっています。騒々しく込み合った待合・退屈な待ち時間・薬品のにおい・無愛想なスタッフ・・・こうしたストレスを軽減し、お医者様ではなく患者様のためにデザインするかたちを探りました。

交通騒音や視線を制御しながら、残された母屋の庭と周りの自然風景を最大限に取り込むこと。プロポーションは、建築に与えたい機能と環境に対する姿勢という二つの要因によって決定しました。

 点在する既存建物をかいくぐった形状がこの建物の平面輪郭です。診察室・処置室など主に患者さんのスペースを中心に9つのグリッドに(180角の集成材柱を3600スパンごとに配置)分節し、その周りに機能の明確な小諸室(X線室・院長室・エントランス・トイレなど)をサテライトのようにブロック配置しました。

診療所を異質な場とすることなくヒューマンなスケールを用いて各部の寸法を割り出し、主要な構造材を露出させることでやわらかな空間に仕上げました。患者さんが待合から廊下を通って診察、処置へ移動するという流れを曖昧にさせて、諸室が各々の空間を表現しすぎないように間仕切り壁は視線のみを制御するものとしました。

 床材は冬場暖かく夏場は涼しい天然素材である多孔質材料のコルクを使っています。頭寒足温を基本に夜間電力を利用した蓄熱式床暖房を敷設し、氷蓄熱式エアコンとのハイブリッドの空調としています。夏季は空間の気積が大きいため上方に溜まった


暖気を高窓から排出することで熱負荷を軽減することができます。
 フラットな大屋根のもと均質フレームによって構成された大きな一室空間により、各諸室は視覚的に遮断されながらも人の気配を感じることができます。また天井周囲の高窓からは自然的要因を内部に伝達する光・風・風景などを映し込み、内外空間を同化することで患者さんの精神的負担軽減を図りました。また梁底を見せた天井には照明器具を付けず間接ライトを天井に照射させ、やわらかく空間を包み込むような照明にし、患者さんが無味乾燥な天井を仰ぎ見るのではなく周辺の自然風景と一体化した場を感じることができるよう配慮しました。
テキスト ボックス: 中2階のロフト??


社団法人広島県建築士会広島支部報「鯉城」2002.9No80-施設チャームポイント紹介より