商業施設から楽しみ施設へ

〜フレスタ横川店+フレスタ本社+フレスタモール                      「カジル横川」のプロデュースを通して〜

北山創造研究所・取締役企画調整ディレクター  鈴木理恵
横川の新しい顔の誕生
 2003年4月25日、横川の中広通り沿いにフレスタの本店とも言える横川店とフレスタ本社が開業し、続いて12月14日、横川駅前にフレスタモール「カジル横川」がオープンしました。1951年に創業したフレスタにとっては創立50周年を記念する一大事業であり、単なる本社及び店舗の建替えではなく、さまざまな目的と理念を持った開発事業でした。

背  景
 戦後50年、日本は驚異的な高度成長を遂げてきました。モノのない時代から、充足時代、そして飽和時代へと、経済が増強していくことと比例して、わたしたちの身近な生活環境も豊かになっていきました。GDPは戦後数十年で数百倍の延び率となり、アメリカに次いで世界第2位、そしてアジアで唯一の先進国首脳会議(サミット)加盟国でもあり、国際的にも影響力の大きな国になったのです。
 しかし、ここ数年こうした急速な経済発展の歪とも言える現象が大きくクローズアップされるようになりました。社会の仕組みが大量に物を作りつづけることを前提に成り立っているため、あらゆるものに行き詰まり状況が露呈してきたのです。大量生産は大量消費を扇動し、最終的には大量な資源の浪費や環境汚染、ゴミ問題へと発展したからです。ひとり一人の暮らしは、ものは増えたものの、一向に充実感や満足感が感じられない。それどころか、言いようのない不安や孤独感を感じているのです。
 21世紀になり、世紀の変わり目と同時に混沌とした中にも「実質」や「実感」にこだわる新しい価値観、社会観が台頭しはじめています。大量生産時代に効率を優先するために、捨て去られたモノや環境、精神をもう一度掘り起こす。こうした時代背景を踏まえ、今回の計画はスタートしました。

店づくりから街づくりへ(計画コンセプト)
 商業施設は、商品を売る場所です。中でもスーパーマーケットは、「売る」効率を最も深化させた業態と言えます。しかし、今回フレスタがコンセプトに掲げたのは「消費の中心」づくりではなく、「暮らしの中心」づくりです。フレスタはこの半世紀横川のまちと共に発展してきました。まちへの感謝、そして、これからもまちと共に歩んでいくという思いをこめ、まちの玄関ともいうべき駅前に立地するフレスタは暮らしに密着したまちの芯となることを目標としました。
そこへ行けば発見がある。
そこへ行けば感動がある。
そこへ行けば出会いがある。
そこへ行けばくつろぎがある。
そこへ行けば楽しみがある。

そして、暮らしに必要な商品が選べ、
おいしさに出会えるのです。

まちをつなげる
 今回の立地は広島の中心地から少し離れてはいますが、かつては北の玄関口として栄えてきたまちです。駅を中心にいくつかの商店街があり、庶民的で気取りのない暖かいコミュニケーションがいまでも残っているところです。そうしたまちの個性や古くからあるものと共存共栄しながら新しいまちの名所を作る。それが駅前に店を構える企業への課題といえます。たまたま、駅前広場も大々的な再整備計画が進行しており、まちの活性化に向けての回遊性や周辺との連続性の強化が叫ばれている時期でもありました。
 駅前は毎日多くの人が行き交う場所であるにも
かかわらず、今までは通りすぎるだけの場所でした。
しかし、これからは高齢化が加速し、車に乗らずに歩いて回れるまちの充実が求められるようになります。加えて、資源・環境問題を踏まえ、公共交通の需要増加が予測されます。こうした状況下でどのような駅前環境を作るべきなのか、ヴィジョンを明確に持たねばなりません。横川に限らず、どこのまちでも高齢者が外に出てくつろげる場所はほとんどありません。特にこれといった用がなくても、何となく過ごせる心地よい場所。老若男女、誰もが気軽に楽しめる場所が、まちには必要なのです。これからの時代に必要な駅前環境としてフレスタモール「カジル横川」が周辺界隈をつなぐ役目を果すのです。

路地的空間
 今回の計画地は、中広通りと駅前広場をL字型に結ぶ形状をしています。フレスタ横川店と「カジル横川」がまちの共有空間となることで、通りぬけができ、界隈に回遊性が生まれます。都心部のメインストリートとは違う、ローカルな小道を歩く楽しさが味わえます。商店街の路地に見たて、奥へ奥へと自然に誘われる空間構成となっています。機械的にコントロールされた空間ではなく、屋外の環境を持ちながら、一つ一つの店舗が個性を発揮し、魅力を作っています。モール内部は奥に進むと、店のファサードが凹凸を持ち、少しずつ狭くなっていきます。いわゆる「路地」と言ってしまうにはやや広い空間ですが、多目的な広がり

があり、さらに奥へと足を進めると3層吹き抜けたスーパーの大空間へとつながります。変化のある空間構成を楽しみながらいつしかまちの次の街区へと歩を進めていることになります。

表と裏をつなぐ。
賑わいを継続する。
点から面へと広がる。
まちに新たな表情を創る。
街区の内部に人が集る芯ができる。
といったパッサ−ジュ(通りぬけ)の効果が実現しました。

スーパーとモールの相乗効果
 スーパーは便利である反面、無機質になりがちです。お客様と店側は必要最小限のコミュニケーションしかなく、「用が済んだら帰る」場所です。今回、フレスタ横川店では、成熟社会となった今、商業施設のあり方も今までとは違った視点を持つべきと考えました。効率よく最大規模の売場を確保し、大量消費を促す場ではなく、公共性や社会性を軸にした商業施設のあり方。そして、日々の暮らしの楽しみ
や充実感につながるサービスや機能を重視しました。買い物をした後もちょっとベンチで一休みする。駅前広場に面したテラスで友人を待ちながらお茶を飲む。
 スーパーとモールがうまく機能補完することで、「用が済んでもそこにいたい」と思わせる環境ができました。

交流するプログラム
 フレスタ横川店の2階には、「おいしさスタジオ」があります。料理教室、

新商品の試食や各種セミナーなど、情報サービスを提供しながら地域コミュニティの役目も果しています。


これから
 横川では平成16年春に駅前広場が全面的に生まれ変わります。機能優先の交通広場ではなく、まちの人々の心を束ねていく装置として、定着し、展開していくことを目標としています。一足先にリニューアルしたフレスタが今後のよい前例となることが期待されています。
 「カジル横川」が低層オープンモール型であるのも、まちと共に発展し、地元の方々に愛されるよう意図したためです。巨大な箱型商業施設が駅前に立ちはだかれば、周囲に威圧感を与えることになります。まち並みを考え、まちに溶け込むことが、駅前で事業を営むものの使命なのです。まちの発展は、事業者にとっても何よりも望むことです。
 今後の成熟社会においては、公共空間の存在が大きな意味をもってくると考えます。官民が足並みを揃え、まち並みを作る必要があります。
 横川駅前界隈が全国の先鞭となる官民一体型のまちづくりとなる、その第一歩が踏み出されたのではないでしょうか。
所在地:広島市西区横川町3−2−36
事業主体:株式会社フレスタ
敷地面積:4846.93 平方メートル
建築面積:3920.74 平方メートル
延床面積:9910.96 平方メートル
      スーパー店舗/1968.0 平方メートル
      本社オフィス/1349.68 平方メートル
      専門店モール/1144.44 平方メートル
      駐車場/50台、駐輪場/215台
構造・規模:1期/S造及びSRC造、
         地下1階+地上3階
      2期/S造、地下1階+地上2階
工期:1期/2001年9月〜2002年4月
   2期/2002年4月〜2002年12月
総合プロデュース:北山創造研究所
     北山孝雄(プロデューサー)
     鈴木理恵(プロジェクト・マネージャー)
     塚本晋一(ディレクター)
     金子勇二(環境デザイナー)
     白石貴大(オフィス計画担当)
設計・監理:北山孝二郎+K計画事務所
      北山孝二郎
      岡田泰明
施工:建築/株式会社竹中工務店
    本社オフィス内装及びスーパー店舗内装/
    株式会社岡村製作所
    サイン施工/株式会社アプトサイン

社団法人広島県建築士会広島支部報「鯉城」2003.3No81-施設チャームポイント紹介より